フランス革命によってフランスに「国民」という意識が芽生えます。
これにより国民主義という理念が誕生します。
国民主義という言葉よりナショナリズムと言った方が聞き慣れている方も多いと思います。
これは近代国家において重要な概念となります。
国民という概念の誕生
フランス革命以前の中世、近世ヨーロッパは封建制と身分制が長く続いていました。
封建制によってひとつの国に様々な民族、宗教もカトリックやプロテスタントの人たちがいて、その国の統一した市民である、という国民の意識はありませんでした。
封建制のもとではその土地は領主のもの、すなわち聖職者や貴族のものとなります。
貴族ならまだ国の貴族ですから、その土地は国のものと考えることもできますが、聖職者は教会から派遣された教会の人間です。
なので聖職者の持っている土地は必然的に教会の持ち物となります。
フランス革命によって市民が平等となり、教会が所有していた土地は国有地となりました。
革命の混乱の中、ヨーロッパ諸国はフランスに対して武力介入を開始します。
そうなると市民たちの中で侵略行為を行うものに対して「自分たちの国を脅かすもの」とか「自分たちの土地や財産を奪うもの」という意識が芽生えます。
この帰属意識こそが市民たちに「国民」という意識を自覚させ国民主義、ナショナリズムに繋がっていきます。
国民軍の誕生
国民という意識の芽生えは軍隊ひいては戦争を変えました。
フランス革命以前の戦争は主に傭兵によるもので、フランス革命後もその理念が浸透していないヨーロッパ諸国の戦闘員は変わらず傭兵でした。
つまり戦争は国民とは関係のないところで起こっていたということです。
さらに傭兵は雇われているに過ぎないので、彼らの戦闘の見返りは金銭的な利益であって戦闘地域からの略奪は当たり前の戦利品でしたから、土地を荒らしていく側の人間でした。
革命が起きたフランスでは混乱の続く中で国が脅かされているわけですから、無責任な傭兵を雇っている余裕はありません。
そうした中で革命政府は徴兵制を敷き、国から「国のために働く兵士」を募ったのです。
ナショナリズムの拡散
徴兵制によって国から優秀な軍人が集まるようになります。
そのうちの一人がフランスの英雄ナポレオン・ボナパルトです。
彼の功罪はヨーロッパ諸国に多大な影響を与え、彼無くしてフランスないしヨーロッパの近代史を語ることはできないでしょう。
そのひとつとして彼がナポレオン戦争を通じてフランス革命の理念を占領した地域に広めたことが挙げられます。
フランス革命で誕生した国民主義という理念は、フランス革命戦争で確実なものとなり、そしてナポレオン戦争によってヨーロッパ諸国へ拡散されました。
そしてそれはやがて国民国家や帝国主義に結びついていくのです。